マーケティングROIとは?目安や業界平均にROASとの違いを解説
マーケティングROIとは?ROIの計算方法から具体的な改善策、業界平均、ROASとの違いまで網羅的に解説します。費用対効果を正しく測定・改善し、ビジネスの成果を最大化したいマーケティング担当者は必見です。
企業のマーケティング担当者であれば、「その施策、費用対効果はどうなの?」と問われる場面は少なくないでしょう。感覚的な成果ではなく、客観的な数値でビジネスへの貢献度を証明するために不可欠な指標が「マーケティングROI」です。
この記事では、
- マーケティングROIの基礎知識
- 具体的な計算方法
- 業界平均
- 成果を最大化するための改善策
これらを網羅的に解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
ROIとは?
ROIとは「Return on Investment」の略語で、日本語では「投資収益率」や「投資対効果」と訳されます。文字通り、ある事業や施策に投じた費用(投資)に対して、どれだけの利益を生み出せたのかを測るための指標です。
ROIはパーセンテージで示され、この数値が高いほど、効率的に利益を生み出している、つまり「投資対効果が高い」と評価できます。
ビジネスにおけるあらゆる投資判断の場面で、その妥当性を測るために用いられる基本的な経営指標の一つです。
マーケティングROIとは?
ROIの基本的な考え方をマーケティング活動に適用したものが「マーケティングROI」です。
Web広告の出稿、コンテンツマーケティング、イベントの開催、SNSキャンペーンなど、様々なマーケティング施策に投下した費用に対して、どれだけの利益が生まれたかを具体的に数値化します。
これにより、どのマーケティング活動が最終的な利益に最も貢献しているのかを客観的に把握し、評価することが可能になります。
なぜマーケティングにおいてROIが重要なのか?
現代のマーケティングにおいてROIが重要視される理由は大きく三つあります。
マーケティング活動の成果を可視化できる
第一に、マーケティング活動の成果を可視化できる点です。かつて評価が難しかったマーケティングの貢献度を「利益」という明確な指標で示すことで、社内での説明責任を果たし、その価値を正当に証明できます。
データに基づいた合理的な意思決定が可能になる
第二に、データに基づいた合理的な意思決定が可能になる点です。各施策のROIを比較検討することで、どの施策に予算を集中させ、どの施策を改善または中止すべきか、客観的なデータに基づいて判断できます。これにより、限られた予算を最も効率的な形で配分する「予算の最適化」が実現します。
事業全体の収益最大化に繋がる
第三に、事業全体の収益最大化に繋がる点です。ROIの高い施策にリソースを集中させることは、すなわち企業の利益を最大化する活動に他なりません。マーケティングが単なるコスト部門ではなく、利益を生み出すプロフィットセンターであることを示す上でも、ROIは極めて重要な役割を担います。
マーケティングROIの目安
マーケティングROIの目標値を設定する際、まず基準となるのが100%という数値です。ROIが100%の状態は、投資した費用とそれによって得られた利益が同額であることを意味し、いわゆる「損益分岐点」となります。
つまり、マーケティング活動として最低限目指すべきラインが100%です。これを上回れば黒字、下回れば赤字ということになります。
ただし、理想的なROIはビジネスの成長フェーズや目的によって異なります。新規事業の立ち上げ期でまずはシェア獲得を優先する場合は一時的に100%を下回ることも許容されるかもしれませんし、成熟期にある事業であれば200%、300%といった高い数値を安定的に目指す必要があります。
マーケティングROIの計算方法
マーケティングROIは、利益を投資額で割り、100を掛けることで算出します。計算式は以下の通りです。
ROI (%) = (利益 ÷ 投資額) × 100
ここで言う「利益」は、施策によって得られた売上から、売上原価と施策にかかった投資額(マーケティング費用)を差し引いて計算します。
利益 = 売上 - 売上原価 - 投資額
具体的な数字を当てはめて計算してみましょう。
【計算例】
あるWeb広告キャンペーンに100万円の費用(投資額)をかけたとします。 その結果、キャンペーン経由で500万円の売上が発生し、その売上原価が250万円だったと仮定します。
まず、キャンペーンによって得られた利益を計算します。
利益 = 500万円(売上) - 250万円(売上原価) - 100万円(投資額) = 150万円
次に、この利益を使ってROIを算出します。 ROI = (150万円 ÷ 100万円) × 100 = 150%
この場合、マーケティングROIは150%となり、投資額100万円に対して1.5倍の利益を生み出した、費用対効果の高い施策だったと評価できます。
マーケティングROIの業界平均
自社のROIが適正な水準にあるかを判断するために、業界平均は一つの参考になります。
しかし、日本国内において、公的機関や調査会社が発表している網羅的な業界別ROIデータは、2025年現在、残念ながら広く公開されていません。これは、利益の算出方法が企業ごとに異なることや、ROIが企業の収益性に直結する重要な経営情報であるため、公開されにくいという背景があります。
参考として海外の調査データや一般的な傾向を見ると、ECサイトなどのEコマース、金融、ソフトウェア業界などはROIが高い傾向にあります。
一方で、製造業や建設業など、製品開発やサービス提供までのリードタイムが長く、マーケティング以外のコストが大きい業界は、相対的にROIが低くなる傾向が見られます。
重要なのは、公開データに一喜一憂するのではなく、自社の過去のROIデータと比較して改善しているか、また競合他社の動向を参考にしながら、自社独自の目標値を設定し、その達成度を追いかけることです。
マーケティングROIを改善させる方法
算出したROIが目標に満たない場合、改善に向けたアクションが必要です。ROIを改善するアプローチは、主に「利益を増やす」か「投資額を減らす」の二つに集約されます。
利益を増やすためにできること
まず、利益を増やすためには、LTV(顧客生涯価値)の向上が鍵となります。一度きりの取引で終わらせず、リピート購入や上位プランへのアップグレードを促すことで、顧客一人あたりから得られる総利益を高めます。
また、マーケティングオートメーション(MA)などを活用して顧客データを分析し、パーソナライズされたアプローチでコンバージョン率を高めることも直接的な利益向上に繋がります。
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投資額を減らすためにできること
次に、投資額を減らす視点では、費用対効果の低い施策の見直しが不可欠です。各施策のROIを個別に算出し、成果が出ていない広告チャネルやコンテンツへの投資を停止または縮小します。
これにより生まれた余剰予算を、ROIの高い施策に再配分することで、全体のROIを効率的に引き上げることができます。
マーケティングROIを測定する方法・ツール
正確なROIを測定するには、投資額とそれによって生まれた売上・利益を正確に紐づける必要があります。この測定を効率化し、精度を高めるために様々なツールが活用されています。
Webサイト上の成果を測定する上ではGoogle Analyticsが基本です。
目標設定機能を使えば、特定のアクション(商品の購入、問い合わせ完了など)をコンバージョンとして計測し、広告キャンペーンごとの成果を追跡できます。
さらに高度な分析には、CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)が有効です。
これらのツールは、マーケティング活動から生まれたリード(見込み客)が、その後の営業プロセスを経て、最終的にいくらの売上になったのかを追跡・管理します。SalesforceやHubspotなどが代表的なツールです。
また、複数の広告媒体を横断して効果を測定したい場合は、広告効果測定ツール(例:アドエビス)などの導入が効果的です。各広告がコンバージョンにどう貢献したかを可視化し、より正確なROI算出を支援します。
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マーケティングROIの注意点
非常に有用な指標であるマーケティングROIですが、活用する上でいくつかの注意点があります。
ROIが全てではない
一つ目は、ROIが全てではないということです。例えば、企業のブランド認知度を高めるための施策や、長期的な顧客との関係構築を目的としたコンテンツマーケティングは、すぐには直接的な利益に結びつかないかもしれません。
しかし、これらは将来の利益の土台となる重要な活動です。短期的なROIの数値だけを見てこれらの活動を切り捨ててしまうと、長期的な成長機会を失うリスクがあります。
測定期間の設定
二つ目は、測定期間の設定です。すぐに成果が出るWeb広告と、効果発現までに時間がかかるSEOやコンテンツマーケティングでは、評価すべき期間が異なります。
施策の特性を考慮せず、同じ期間でROIを比較すると、本質的な価値を見誤る可能性があります。施策の目的に合わせた適切な評価期間を設定することが重要です。
知っておきたいマーケティングROIトピックス
ここでは、ROIについてより深く理解するために、関連する重要なトピックスを解説します。
ROIとROASの違い
ROIとよく似た指標にROAS(Return On Advertising Spend)があります。ROASは「広告費用対効果」と訳され、投下した「広告費」に対してどれだけの「売上」が生まれたかを測る指標です。
ROAS (%) = (広告経由の売上 ÷ 広告費) × 100
ROIが利益ベースで費用対効果を評価するのに対し、ROASは売上ベースで評価する点が最大の違いです。ROASは広告キャンペーンの成果を純粋に測るのに適していますが、利益が出ているかまでは分かりません。ROASが高くても、原価が高ければ赤字の可能性があります。ビジネス全体の収益性を判断するには、ROIの視点が不可欠です。
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ROIが高い状態とは?
ROIが高い状態とは、投資した費用を大きく上回る利益を生み出せている、非常に効率的な状態を指します。例えばROIが300%であれば、100万円の投資で300万円の利益を生み出したことになります。
これは、マーケティング戦略が成功しており、事業成長の強力なエンジンとなっている証です。高いROIを維持・向上させることは、企業の収益性を高める上で重要な目標となります。
ROIが100%以下の状態とは?
ROIが100%を下回っている状態は、投資した費用を利益で回収できていない、つまり「赤字」の状態を意味します。例えばROIが80%であれば、100万円の投資に対して80万円の利益しか得られておらず、20万円の損失が出ていることになります。
この状態が続く場合、施策の目的、ターゲット、手法、コスト構造など、根本的な見直しが急務であると言えるでしょう。
ここまでの総括
マーケティングROIは、単なる計算式ではなく、マーケティング活動の価値を客観的に証明し、ビジネスの成長を加速させるための羅針盤です。その重要性を理解し、正しく計算し、そして改善のサイクルを回し続けること。これが、成果を出すマーケターに共通する姿勢です。
今回解説した計算方法や改善策、注意点を参考に、ぜひ自社のマーケティング活動を見直し、ROIという強力な武器を使いこなしてください。データに基づいた戦略的な意思決定が、あなたのビジネスをさらに成長させるはずです。