MAシナリオとは?設計方法にテンプレート例やマーケティングシナリオとの違いを解説

「MAシナリオとは?」「どう作るの?」「効果的な事例は?」そんな疑問を解決!MAシナリオの基本から設計ステップ、テンプレート、参考にしたい成功・失敗事例、改善方法まで網羅的に解説。マーケティングシナリオの考え方も含め、MAで成果を出す方法がわかります。

2025-05-02
Category:
MA シナリオ

マーケティングオートメーション(MA)ツールを導入したものの、

  • 「思うように成果が出ない」
  • 「具体的に何をすればいいかわからない」

と感じていませんか? 

その鍵を握るのが「MAシナリオ」です。MAシナリオを適切に設計・運用することで、顧客とのコミュニケーションを最適化し、マーケティング効果を飛躍的に高めることができます。

この記事では、MAシナリオの基本的な考え方から、具体的な設計ステップ、すぐに活用できるテンプレート、参考になる成功・失敗事例、継続的な改善方法、さらには主要MAツールでのシナリオ設定・管理のポイントまで、網羅的に解説します。

より広範な「マーケティングシナリオ」の考え方にも触れながら、あなたの会社のMA活用を成功に導くヒントを提供します。

MAシナリオとは?

MAシナリオとは、マーケティングオートメーション(MA)ツールを活用し、「どのようなターゲット(Who)に」「どのタイミング(When)で」「どのようなコンテンツやアプローチ(What/How)を行うか」を具体的に定めた計画やその自動実行プロセスのことを指します。

顧客の属性や行動履歴といったデータに基づき、あらかじめ設定した条件(トリガー)に応じて、メール配信、スコアリング、Webサイトでのコンテンツ表示、営業担当への通知といったアクションを自動的に実行させるための設計図と言えます。

MAシナリオのメリット

MAシナリオが重要視される理由は、以下のようなメリットがあるためです。

  • 業務効率化: メール配信やリード評価などの定型業務を自動化し、マーケターはより戦略的な業務に集中できる。
  • 個別最適化されたコミュニケーション: 顧客一人ひとりの興味関心や検討度合いに合わせた情報提供が可能になり、顧客体験(CX)が向上する。
  • リードナーチャリングの質の向上: 見込み顧客(リード)を適切なタイミングで継続的にフォローし、購買意欲を高める(リードナーチャリング)ことができる。
  • 営業との連携強化: ホットリード(購買確度の高い見込み顧客)を自動的に特定し、営業部門へスムーズに引き渡せる。
  • LTV(顧客生涯価値)の向上: 既存顧客に対しても、アップセルやクロスセルのシナリオを実行し、長期的な関係性を構築できる。

MAシナリオの目的

また、MAシナリオは、以下のような様々な目的で活用されます。

  • リードナーチャリング(見込み顧客育成): 資料請求や問い合わせをしてくれたリードに対し、ステップメールなどで継続的に情報を提供し、関係性を深める。
  • 休眠顧客の掘り起こし: 長期間反応のない顧客に対し、特別なオファーや最新情報を提供し、再アプローチを図る。
  • アップセル・クロスセル: 既存顧客の購買履歴や利用状況に基づき、関連商品や上位プランを提案する。
  • イベント・セミナー集客とフォロー: イベントの告知、リマインド、参加後のお礼や資料送付などを自動化する。
  • Webサイト行動連動: 特定のページを閲覧した顧客に、関連性の高いコンテンツをメールで送付したり、ポップアップを表示したりする。

マーケティングシナリオとは?

「MAシナリオ」と似た言葉に「マーケティングシナリオ」があります。

マーケティングシナリオは、顧客とのあらゆる接点(オンライン・オフライン問わず)におけるコミュニケーション全体を、顧客の視点に立って設計する、より広範な戦略や計画を指します。ペルソナ設定、カスタマージャーニーマップの作成、各タッチポイントでのメッセージング戦略などが含まれます。

MAシナリオは、このマーケティングシナリオの一部であり、特にMAツールを用いて自動化する部分の具体的な実行計画と位置づけられます。

つまり、効果的なMAシナリオを設計するためには、まず顧客理解に基づいた全体的なマーケティングシナリオを描くことが非常に重要になります。どのような顧客に、どのような体験を提供し、最終的にどのような関係性を築きたいのか、という大きな視点があってこそ、MAシナリオは真価を発揮するのです。

MAシナリオの設計

成果の出るMAシナリオを設計するには、行き当たりばったりではなく、段階を踏んで計画的に進めることが重要です。ここでは、効果的なMAシナリオを設計するための基本的な7つのステップを解説します。

1.目的・ゴール(KGI/KPI)設定

まず、このシナリオで何を達成したいのかを明確にします。「商談数を月10件増やす」「休眠顧客からの問い合わせを5件獲得する」「特定製品のクロスセル率を3%向上させる」など、具体的な目標(KGI: 重要目標達成指標)を設定します。

さらに、目標達成度を測るための中間指標(KPI: 重要業績評価指標)も設定します(例: メール開封率、クリック率、資料ダウンロード数、セミナー申込数など)。

2.ターゲット(ペルソナ)設定

「誰に」対してアプローチするのか、具体的な顧客像(ペルソナ)を設定します。業種、役職、抱えている課題、情報収集の方法などを詳細に定義することで、より響くコミュニケーションが可能になります。

3.カスタマージャーニーマップ作成

設定したペルソナが、自社の商品やサービスを認知し、興味を持ち、比較検討を経て購入・利用、そして継続利用に至るまでの行動、思考、感情の変化を時系列で可視化します。これにより、どのタイミングで、どのような情報やアプローチが必要かが見えてきます。

4.トリガー設定

シナリオを開始する「きっかけ」となる条件(トリガー)を具体的に定義します。

  • 例: 「特定のWebページを閲覧した」「資料をダウンロードした」「メールを開封/クリックした」「セミナーに申し込んだ」「〇日間アクションがない(休眠)」など。

5.アクション設定

設定したトリガーに応じて、MAツールが自動で実行する具体的な行動(アクション)を設計します。

  • 例: ステップメールの送信(1通目:資料送付、3日後:活用事例紹介、7日後:個別相談案内など)、スコアリングの加算/減算、特定のリストへの追加/削除、営業担当への通知(タスク作成)、Webサイトでのコンテンツ表示変更など。

アクションは分岐させることも可能です(例: メールをクリックした人には次のステップへ、クリックしなかった人には別のメールを送る)。

6.コンテンツ準備

シナリオのアクションで必要となるコンテンツ(メールの文面、ランディングページ、ダウンロード資料、動画、ブログ記事など)を作成・準備します。ターゲットの課題解決や興味関心に応える、質の高いコンテンツを用意することが重要です。

7.効果測定方法の決定

ステップ1で設定したKGI/KPIを、どのように測定・評価するかを事前に決めておきます。MAツールのレポート機能やアクセス解析ツールなどを活用します。

【設計時のポイント】

  • シンプルに始める: 最初から複雑なシナリオを作ろうとせず、まずは簡単なものから試して徐々に改善していくことが成功のコツです。
  • 顧客視点を忘れない: 企業側の都合ではなく、常に顧客がどのような情報を求めているか、どのようなタイミングが適切かを考えます。
  • 部門間連携: マーケティング部門だけでなく、営業部門やカスタマーサポート部門とも連携し、顧客情報を共有しながら一貫性のあるアプローチを目指します。

MAシナリオのテンプレート

MAシナリオをゼロから設計するのは大変ですが、テンプレートを活用することで、効率的に、かつ抜け漏れなくシナリオを作成できます。

テンプレートを利用するメリットは以下の通りです。

  • 設計時間の短縮: 必要な項目が整理されているため、スムーズに設計を進められます。
  • 抜け漏れの防止: 考慮すべき要素が網羅されているため、重要なポイントを見落とすリスクを減らせます。
  • チーム内での共通認識: テンプレートを使うことで、関係者間での認識合わせが容易になります。

基本的なMAシナリオテンプレートの構成要素例:

MAシナリオ例

ここでは、具体的なMAシナリオの成功事例と、陥りがちな失敗事例について見ていきましょう。

MAシナリオの成功事例

【BtoB 製造業】資料ダウンロード後のステップメールでアポ率向上

  • 課題: Webサイトからの資料ダウンロードは多いが、なかなか商談に繋がらない。
  • シナリオ: 資料ダウンロード者をターゲットに、①御礼と資料送付メール、②(3日後)関連技術情報の提供メール、③(7日後)導入事例紹介メール、④(14日後)個別技術相談会の案内メール、といったステップメールを自動配信。メール内のリンククリックや特定ページの閲覧に応じてスコアリングを行い、一定スコアを超えたリードを営業に通知。
  • 成果: ターゲットに合わせた段階的な情報提供により顧客の理解度が深まり、アポイントメント獲得率が以前の〇〇%向上した。

【SaaS 企業】休眠顧客への段階的アプローチで商談創出

  • 課題: 過去に接点があったものの、長期間アクションのない休眠顧客リストが活用できていない。
  • シナリオ: 休眠期間に応じてセグメント分けし、まずは比較的ライトな情報(業界トレンドレポートなど)を提供。反応があった顧客には、次に製品のアップデート情報や限定セミナーの案内を送付。さらに反応が良い顧客には、個別デモの案内を送る、という段階的なアプローチを実施。
  • 成果: 休眠顧客リストの中から〇〇件の有効商談を創出することに成功した。

【EC サイト】購入履歴に基づいたクロスセル提案で客単価アップ

  • 課題: リピート購入はあるものの、顧客単価が伸び悩んでいる。
  • シナリオ: 商品Aを購入した顧客に対し、一定期間後に商品Aと関連性の高い商品Bや、一緒に使うと便利な商品Cをレコメンドするメールを自動配信。過去の閲覧履歴なども加味して、パーソナライズされた提案を行う。
  • 成果: 関連性の高い提案によりクロスセル率が向上し、顧客単価が〇〇%アップした。

MAシナリオの失敗事例

目的・ターゲットが曖昧で効果が出なかった

  • 原因: 「とりあえずMAを導入したので何かシナリオを」と、目的やターゲットを明確にしないままシナリオを実行してしまった。誰に何を伝えたいのかが不明確なため、顧客の反応も薄く、効果測定もできなかった。
  • 対策: 必ずシナリオ設計の最初のステップである「目的・ゴール設定」「ターゲット設定」を具体的に行う。

複雑すぎるシナリオで運用が回らなくなった

  • 原因: 最初から理想を追い求め、分岐や条件が非常に多い複雑なシナリオを設計してしまった。結果、設定に時間がかかりすぎる、途中でエラーが起きても原因特定が困難、改善もままならない、という状態に陥った。
  • 対策: まずはシンプルなシナリオから開始し、効果検証をしながら徐々に改善・拡張していく。

コンテンツの質が低く、顧客の反応が悪かった

  • 原因: シナリオの設計はしたが、そこで送るメールの文面が魅力的でなかったり、用意した資料の内容が薄かったりしたため、顧客に開封・クリックされず、期待した効果が得られなかった。
  • 対策: ターゲット顧客の課題解決や興味関心に応える、質の高いコンテンツを作成することに注力する。件名やCTAなども工夫する。

効果測定や改善を行わず、やりっぱなしになった

  • 原因: シナリオを設定して実行しただけで満足してしまい、その後の効果測定や分析、改善活動を怠った。市場や顧客の変化に対応できず、徐々にシナリオの効果が薄れていった。
  • 対策: 事前にKPIを設定し、定期的に効果測定を行う。データに基づき、課題を発見し、改善策を実行するPDCAサイクルを回す文化を作る。

失敗事例から学ぶことは多くあります。これらの失敗パターンを参考に、自社のシナリオ設計・運用に活かしましょう。

シナリオの改善例

MAシナリオは一度作ったら終わりではありません。市場の変化、顧客の反応、ビジネス状況に合わせて継続的に見直し、改善していくことが極めて重要です。

効果測定の重要性

改善の第一歩は、現状を正しく把握すること、つまり効果測定です。MAツールのレポート機能などを活用し、以下のような指標を定期的にチェックしましょう。

  • メール関連指標: 開封率、クリック率(CTR)、配信停止率
  • コンテンツ関連指標: 資料ダウンロード数、動画視聴完了率
  • Web行動関連指標: 特定ページの閲覧数、滞在時間
  • コンバージョン関連指標: セミナー申込数、問い合わせ数、個別相談申込数、商談化数・率、受注数・率

改善のステップ (PDCA)

  1. データ分析 (Check): 測定したデータをもとに、シナリオのどこに課題があるのか(ボトルネック)を特定します。例えば、「メールの開封率は高いがクリック率が低い」「特定のステップでの離脱が多い」など。
  2. 仮説立案 (Plan): なぜその課題が発生しているのか、原因についての仮説を立てます。「メールの件名が良くないのでは?」「CTAボタンが分かりにくいのでは?」「提供しているコンテンツがターゲットに合っていないのでは?」など。
  3. 施策実行 (Do): 仮説に基づいて、シナリオの修正・改善策を実行します。
    • 開封率が低い場合: メールの件名や差出人名、配信タイミングを見直す。
    • クリック率が低い場合: メールの本文構成、コピーライティング、CTAボタンのデザインや文言、リンク先コンテンツを改善する。
    • コンバージョン率が低い場合: ランディングページ(LP)の構成やフォーム項目、オファー(特典)内容を見直す。ターゲットセグメントの精度を高める。
    • 特定のステップで離脱が多い場合: そのステップのアクションやコンテンツ、タイミングが適切か見直す。不要なステップは削除する。
  4. 効果検証 (Action): 改善策実行後、再度データを測定し、効果があったかどうかを検証します。効果があれば継続・横展開し、なければ別の仮説を立てて再度改善に取り組みます。

ABテストの活用 件名、コンテンツ、CTAボタンなどを改善する際には、ABテストが有効です。2つのパターンを用意し、どちらがより良い結果をもたらすかを比較検証することで、効果的な改善策を見つけやすくなります。多くのMAツールにはABテスト機能が搭載されています。

定期的な効果測定と改善のサイクルを回し続けることで、MAシナリオの効果を最大化していくことができます。

MAツール別のシナリオ設定・管理について

MAシナリオを作成・実行するには、MAツールが不可欠です。主要なMAツールにはそれぞれ特色のあるシナリオ機能が搭載されています。ここでは代表的なツールのシナリオ機能について簡単に触れておきます。

Salesforce Account Engagement (旧 Pardot)

「Engagement Studio」というビジュアルベースのシナリオビルダーが強力。直感的なインターフェースで複雑な分岐やアクション(メール送信、リスト追加、Salesforceタスク作成、スコアリングなど)を持つシナリオを設計・管理できる。Salesforceとの連携がスムーズ。

Adobe Marketo Engage

高機能でカスタマイズ性が高いMAツール。「スマートキャンペーン」機能で多様なトリガーとフローを設定可能。リードの行動や属性に応じて非常に細かいセグメンテーションとパーソナライズされたシナリオを実行できる。BtoBマーケティングに強み。

HubSpot

インバウンドマーケティングの思想に基づいたオールインワンツール。「ワークフロー」機能でMAシナリオを作成。トリガー(フォーム送信、リスト参加、プロパティ変更など)に基づき、メール送信、内部通知、タスク作成、プロパティ設定などのアクションを自動化。CRM、SFA、CMS機能との連携がシームレス。

SATORI

国産MAツールで、特に匿名の見込み顧客へのアプローチに強みを持つ。「シナリオ」機能で、Webサイト訪問者の行動(特定ページの閲覧、滞在時間など)をトリガーにしたポップアップ表示やメール配信などを設定可能。UIがシンプルで分かりやすいと評価されることも。

BowNow

「シンプルで使いやすい」をコンセプトにした国産MAツール。特にBtoB向けで、無料で利用できるフリープランもある。「シナリオ」機能で、フォーム通過やメール開封などをトリガーにしたメール配信などの自動化が可能。

【ツール選定時のポイント】 

MAツールを選ぶ際には、価格や基本的な機能だけでなく、自社が実現したいMAシナリオを設計・実行できるか、操作性は自社の担当者に合っているか、サポート体制は十分か、といった観点も重要になります。各ツールの無料トライアルやデモを活用して比較検討することをおすすめします。

(※上記はツールの概要紹介であり、詳細な機能や操作方法は各ツールの公式サイトやヘルプをご参照ください。)

MAシナリオの総括

MAシナリオは、マーケティングオートメーションを成功させるための設計図であり、エンジンとも言える重要な要素です。この記事では、MAシナリオの基本概念から、具体的な設計方法、テンプレート、成功・失敗事例、改善のポイント、そしてツールとの関連性までを解説してきました。

効果的なMAシナリオを設計・運用するには、まず顧客を深く理解し、明確な目的を持つことが不可欠です。そして、最初から完璧を目指すのではなく、シンプルなシナリオから始めて、データに基づき継続的に改善していく姿勢が重要となります。

この記事が、あなたの会社のマーケティング活動をより効果的で効率的なものにするための一助となれば幸いです。ぜひ、今日からMAシナリオの設計・改善に取り組んでみてください。

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