アドレサブル広告

~デジタル時代における広告のキープレーヤー~

2022-03-23
Category:
Ad

2020年、Googleが発表したサードパーティーcookieの廃止により、各企業は広告戦略の見直しを迫られています。そして今、その対応策として注目を集めているのが、cookieを使わずにターゲット設定ができる「アドレサブル広告」です。今回このコンテンツでは、「広告の費用対効果」や「そもそも広告から顧客獲得につながらない」という課題を打破しうる可能性を秘めた「アドレサブル広告」という新しい広告手法について概要を説明させていただき、アドレサブル広告を活用することのメリットや、運用上の注意点、運用していくために押さえておきたいポイントなどをまとめていきます。

【目次】

◆アドレサブル広告とは

・サードパーティCookieとは

・なぜアドレサブル広告が注目されているのか

◆アドレサブル広告のリスト作成から広告配信までの流れ

・具体的な流れ

◆リターゲティング広告との違い

◆アドレサブル広告のメリット/デメリット

・アドレサブル広告のメリット

・アドレサブル広告のデメリット

◆具体的なアドレサブル広告の活用事例

 ・結論

◆アドレサブル広告に対応している広告媒体は?

◆アドレサブル広告を運用するために必要なこと

 ・社内に存在する顧客データの統合

 ・顧客データの蓄積

◆まとめ

  • アドレサブル広告とは

アドレサブル広告とは、企業や団体が持っているメールアドレス、や電話番号などの顧客データ、リード情報として獲得したメアドや電話番号の情報を活用して、ユーザーをセグメントして、個人を特定したネット広告を配信する方法のことです。

  • サードパーティーcookieとは

先にも触れましたが、Googleがサードパーティーcookieの廃止を発表しました。サードパーティーcookieとは、ユーザーがサイトを訪れた日時や回数・メールアドレスなど多岐に渡るユーザー情報がインターネット事業者のもとに集約されたデータ群のことです

サードパーティーcookieを利用することにより、例えばAというユーザーが複数のサイトを横断して閲覧した履歴を追跡していくために使われており、その情報をさまざまなデータと紐付けて活用されています。

「サードパーティcookieのイメージ図」

  • なぜアドレサブル広告が注目されているのか。

ではなぜ今アドレサブル広告が注目されているのでしょうか。サードパーティーcookieが廃止されることにより、cookieをベースとし、自社のWEBサイト訪問者に対してWEB広告を打つ「リターゲティング広告」は機能しなくなってしまう可能性が考えられます。そのために各企業が、各企業内に蓄積された顧客情報を活用したマーケティングの重要性が高まっていきます。そこで注目を浴びているのが、アドレサブル広告になります。

  • アドレサブル広告のリスト作成から広告配信までの流れ

では、具体的にアドレサブル広告はどのような仕組みで運用されているのでしょうか。

以下に具体的なセグメント(広告を配信するターゲットとなる母集団)作成までの流れを記載します。

  • 具体的な流れ

【作業①】広告主

自社の顧客データ(メールアドレス・電話番号・住所等)をリスト化します。

【作業②】広告主

①でリスト化した顧客データを、各媒体(Google・Yahoo等)にアップロードします。

【作業③】媒体

暗号化されたデータを受け取り、各媒体ごとにマッチするユーザーをリスト化。

【作業④】広告主

マッチしたユーザーリストをもとに、セグメントを作成し、web広告を配信。

上記のような流れでアドレサブル広告は運用されて行きますが、ここで多くの企業が懸念するのは、「顧客情報流出のリスク」です。ただここに関して申し上げますと、アドレサブル広告を配信する際、各媒体の広告アカウント(GDN、YDN)にデータがアップロードされると、個人情報はハッシュ化(元のデータを不規則な文字列に置換する処理)され、暗号化されたデータになるのでご安心ください。

  • リターゲティング広告との違い

リターゲティング広告とアドレサブル広告はよく混同されることが多いので、ここでは両者の違いについてご説明していきます。

先程も少し触れましたが、「サイトに一度訪れたユーザーを追跡して、表示することができる広告」のことをリターゲティング広告と呼びます。例えば、チョコレートのECサイトを一度見たあとに、他の関係ないサイトを閲覧するとそのサイトにチョコレートに関する広告が表示されるといったケースがあります。おそらく皆さんもこういった経験はお有りなのではないでしょうか

①対象範囲

リターゲティング広告は、サイトに一度でも訪問してくれたお客さんの情報を蓄積することができるので、ある程度広い範囲に広告を打つことが可能です。その点、アドレサブル広告はメールアドレスを起点にしており、情報取得の難易度が上がってしまう分、対象範囲は狭まってしまいます。ただその反面、アドレサブル広告のほうが精度の高い対象リストを生成することができます。

②有効期間

リターゲティング広告は、先程ご説明したcookieをベースとしており、そのcookieには有効期間というものが存在します。そのためリターゲティング広告は、同じユーザーを延々と追跡することはできません。アドレサブル広告は、自社の顧客データであるため、その情報が正確であれば、期間の制約なく同じユーザーにアプローチすることが可能になります。

「リターゲティング広告」と「アドレサブル広告」のイメージ図

  • アドレサブル広告のメリット/デメリット
  • アドレサブル広告のメリット

 アドレサブル広告を運用するメリットしては、大きく以下の3点が挙げられます。

①自社データを基盤とした集客が可能

⇛顧客のメールアドレスなどを社内に蓄積されている環境が既にあれば、その情報をもとにスピーディーにアドレサブル広告を打つことができます。また情報を保有しているということは、既に一度は自社の商品に興味関心を示してくれた顧客層であるということが想定できるため、効果性の高いアドレサブル広告を実施することができます。

②特定のユーザーへ配信できる

⇛アドレサブル広告は自社に蓄積されている顧客データを活用するので、例えば「過去〇〇年以内に購入履歴がある」など、企業のマーケティング方針に合わせた細かいセグメントによる広告を配信することが可能になります。また、自社独自の顧客データをもとにしたターゲット群のため、他社との差別化を図った広告施策を打つことができます。

③DM、メルマガよりもユーザーに読んでもらえる可能性が高い

アドレサブル広告は、あくまでメールアドレスによってWEB上の個人を特定することによって、WEB上で広告を配信する方法です。広告を載せたメールをメールアドレス保有者に直接飛ばすという方法ではないので、広告を読んでもらえないというリスクがメルマガなどよりも格段に低くなります。

  • アドレサブル広告のデメリット

一方でアドレサブル広告のデメリットしては以下の2点が挙げられます。

①配信できる母数が顧客データ数に依存してしまう

⇛外部に蓄積している顧客データではなく、あくまで自社内に顧客データを保有していることがアドレサブル広告の前提となるため、顧客のデータ基盤が企業内に現時点で整備されていないとアドレサブル広告の運用は難しくなります。

②蓄積されたデータの定期的な更新が必要

例えば、5年前に購入した顧客のリストが1000件あり、それを先程のフローでいう②の段階で、各媒体にアップロードしたときに、実際は使われていないメールアドレスが大半でしたという状況になった場合、当初立案したマーケティング戦略に影響を及ぼしてしまうことが考えられます。そのため定期的なリストの更新が必要になります。

  • 具体的なアドレサブル広告の活用事例

では具体的にアドレサブル広告をうまく活用すると、企業にどのようなインパクトをもたらすことができるのでしょうか。

ケース①:スポーツ用品通販会社

トップアスリートや各界の著名人も愛用する、体のコンディションを整える機能性商品を製造・販売している企業の事例です。

課題:ECサイトに注力しており、実際にサイト来訪者へのリターゲティング広告については費用に見合った効果も出ているものの、それ以外の施策の費用対効果が見合わない。顕在化している需要は獲得できているが、潜在的な需要は獲得できていない。

施策:上記の課題に対して、新製品の告知等を潜在層に向けて効率よく行うために、特定アスリートに関連する商品購入者の情報と類似する属性の顧客に対して、アドレサブル広告をつかい、Facebookで広告を配信しました。

結果:結果としては、既存で行っていた広告施策と比較して、アドレサブル広告を活用した施策は、CPA(顧客獲得単価)が1/6に下がりました。

ケース②化粧品通販会社

次はスキンケアクリームを販売している化粧品の企業で、自社のお得意様の類似ユーザへアドレサブル広告を行ったことで、新規顧客の開拓につなげることができた事例です。

課題:サンプル購入から本商品購入へ促すマーケティング施策を実施しているが、本商品購入へなかなか結びつかない。

施策:本商品を購入している顧客と属性が類似したリストを作成、その中からサンプル請求のみの顧客の類似ユーザを除外し、広告を配信。優良顧客に属性が近しい人で、かつサンプル目的のユーザと属性が似ていない人にアドレサブル広告を配信。

結果:サンプルから本商品購入への引き上げ率が200%向上し、新規顧客に割く費用が大幅に圧縮されました。

  • 結論

上記の2つの事例からもわかるように、新規顧客獲得においてはアドレサブル広告を活用した、既存顧客の類似ユーザへの配信が有効です。また、商品や顧客像ごとの類似ユーザへの配信や、顧客の質を考慮した配信が可能となります。

  • アドレサブル広告に対応している広告媒体は?
保存版》アドレサブル広告の各媒体連携時の仕様の違い | AD2|アドツーで、ユーザーのLTV向上に寄与する。

アドレサブル広告は、ある媒体が持っているユーザーの情報と、自社が保有している情報を突合させてマッチングできたユーザーにその媒体経由で広告を配信するという手法です。では、アドレサブル広告に対応している媒体にはどのようなものがあるのでしょうか

①Google広告カスタマーマッチ

 Googleのアドレサブル広告は、一般的に「カスタマーマッチ」と呼ばれ、電話番号やメールアドレス、住所などの顧客情報をもとにユーザーリストが作成可能です。

★利用可能な広告メニュー

・Google検索広告

・Googleショッピング広告

・Gmail広告

・Youtube広告

・Googleディスプレイ広告

など

「カスタマーマッチのイメージ図」

すぐに実践可能!広告効果を大幅に改善するGoogleカスタマー ...

②Yahooディスプレイ

Yahooの広告配信プラットフォームでは、パートナーサイトであるcookpadやAllAboutなどの媒体にも配信することができます。

★利用可能な広告メニュー

サーチターゲティング(検索履歴を追跡して、配信対象を絞り込む広告)

・レスポンシブ広告(広告枠に合わせて、広告のサイズやフォーマットを自動的に調整して、広告掲載面に合うデザインで配信する広告)

インフィード広告(Webサイトやアプリ(画面の上から下に読み進めていくデザイン)のコンテンツとコンテンツの間に表示される体裁の広告)

オーディエンスカテゴリー(特定のカテゴリーに興味・関心を持ったインターネットユーザーに対し、広告を配信するターゲティング機能)

プレースメントターゲティング(任意のウェブサイトや動画、アプリを指定して配信する広告)

など

「インフィード広告のイメージ図」

③Facebookカスタムオーディエンス(Instagramも含む)

こちらもGoogle広告と同様で、メールアドレスや電話番号、住所などの識別情報をもとに、アドレサブル広告のターゲットリストを設定します。

注意点としては、Facebookビジネスマネージャー(複数人でフェイスブックやインスタグラムの管理を行うのに便利な公式ツール)と接続できていない広告アカウントでは、顧客ファイルをアップロード出来ません。

★利用可能な広告メニュー

ディスプレイ広告

Facebookコレクション広告(メインの大きい画像または動画1つと、小さい複数枚の画像が一緒に表示される形の広告)

カルーセル広告(1つの広告に対し複数の画像や動画を横並びに表示できる広告

動画、スライドショー広告

メッセンジャー広告(Facebookのメッセンジャー内に表示される広告)

など

「コレクション広告のイメージ図」

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「カルーセル広告のイメージ図」

Facebookのカルーセル広告とは?効果や活用方法、注意点も | リ ...

④Twitter広告(テイラードオーディエンス機能)

登録されたメールアドレスやTwitterユーザー名を使ってターゲティングすることが可能です。

★利用可能な広告メニュー

プロモツイート(タイムライン上に、個人のツイートと同じように表示される広告)

プロモアカウント(新規フォロワーの獲得を目的として配信することができる広告)

  • アドレサブル広告を運用するために必ず押さえておきたいポイント

ここまで、アドレサブル広告の概要についてご説明して来ました。では、アドレサブル広告を具体的に活用していくためにどのような準備が必要なのでしょうか。

  • 社内に存在する顧客データの統合

 昨今の日本企業にとって、いわゆるKKD(勘、経験、度胸)に基づいた販売戦略からデータを活用したマーケティング戦略への移行が喫緊の課題と言われており、大企業や中小企業もこぞってデータマーケティングの専門部署を立ち上げるなどの動きを見せています。

アドレサブル広告を含め、データを活用したマーケティング施策を実施するためには、各企業の各部門に保管されている顧客データを一元的に管理、活用できる基盤を整備する必要があります。

基盤の整備と聞くと、かなり時間や工数がかかると思われがちですが、CDP(

カスタマーデータプラットフォーム)やCRM(カスタマーリレーションマネジメント)などのツールを使用すれば、それほどの時間や工数をかけること無く、継続的に活用できる顧客データ基盤を構築することができます。

  • 顧客データの蓄積

しかしながら、既存のデータを活用するにも量的な限界があります。そこで、継続的に顧客データを社内に蓄積する仕組みづくりもまた重要であると言えます。

具体的には、MA(マーケティングオートメーション)ツールなどを活用して、顧客とのコミュニケーションを自動化することで、人員をかけること無く、見込み客の情報を取得すること。また、ECサイトの立ち上げ、SNSの運用や自社アプリの開発など、顧客との接点を増やす取り組みなどもひつようとなります。

  • まとめ

 アドレサブル広告は、上手く活用することができれば、とても効果性の高いマーケティング施策を打つことができます。ただし、その前提として社内にデータが蓄積できており、なおかつ活用できるような形であることが大前提になります。前述致しましたように、Googleのサードパーティーcookieの廃止に代表されるように個人データの取得の規制が厳しくなっていく中で、これからの企業には顧客情報を自分たちの手で収集して、それをいかにしてマーケティング戦略に結びつけることができるかのかが問われています。

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