データレイクとデータウェアハウスの違いとは?目的別の選び方から最新トレンドまで解説
データレイクとデータウェアハウスの違いを分かりやすく解説!それぞれの定義、構造、メリット・デメリット、適した目的を比較し、自社に最適なデータ基盤を選ぶための判断基準から、データマートやSnowflakeとの関連まで網羅的に解説します。
企業が保有するデータ量は増加の一途をたどり、その活用はビジネス成長の鍵を握っています。「データをどこに、どのように蓄積し、活用していくか」は多くの企業にとって重要な課題です。
その際に必ずと言っていいほど比較検討されるのが「データレイク」と「データウェアハウス」です。
しかし、これらの違いを明確に理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。
この記事では、データレイクとデータウェアハウスの基本的な違いから、それぞれのメリット・デメリット、さらにはどちらを選ぶべきかの判断基準、そして関連するキーワードまで、網羅的に解説します。
この記事を読むことで、以下の3点が明確になります。
- データレイクとデータウェアハウスの根本的な違いとそれぞれの役割
- どのようなデータを扱い、どのような分析目的の際に各々が適しているか
- 自社のビジネスニーズやデータ戦略に最適なデータ基盤を選択するための具体的な指針
データレイクとデータウェアハウスの違いを端的に言うと
データレイクとデータウェアハウスの最も大きな違いは、保存するデータの「状態」と「利用目的の明確さ」にあります。
データレイクは、構造化データ、半構造化データ、非構造化データといったあらゆる形式の生データを、加工せずにそのままの形で一元的に保存する場所です。自然の湖のように、様々なデータが流れ込み、将来の多様な分析ニーズに備えます。
一方、データウェアハウスは、特定の目的(主にビジネスインテリジェンスやレポーティング)のために、構造化され、整理・加工されたデータを保存する場所です。必要な情報がすぐに取り出せるように整理整頓された倉庫をイメージすると分かりやすいでしょう。
データレイクとは?もう少し詳しく解説
データレイクは、多種多様なソースから生成されるあらゆる形式のデータを、元の形のまま大規模に保存するためのリポジトリです。構造化データ(例:データベースのテーブル)、半構造化データ(例:JSON、XML、CSVファイル)、非構造化データ(例:テキスト、画像、音声、動画)を区別なく格納できます。
データレイクの大きな特徴は「スキーマオンリード」という考え方です。これは、データを保存する時点ではスキーマ(データの構造定義)を定義せず、データを読み込んで分析する際に初めてスキーマを適用するというアプローチです。これにより、事前のデータ変換の手間を省き、迅速にデータを収集・蓄積できます。主にデータサイエンティストやデータエンジニアが、機械学習モデルの構築、探索的データ分析、リアルタイム分析など、まだ明確に定まっていない分析目的や新しい洞察を得るために利用します。
データウェアハウスとは?もう少し詳しく解説
データウェアハウスは、企業内の様々な業務システムから収集したデータを、分析しやすいように事前に定義された形式(構造化データ)に変換・統合し、時系列で蓄積するデータベースです。主に、経営判断や意思決定を支援するためのビジネスインテリジェンス(BI)やレポーティングに利用されます。
データウェアハウスは「スキーマオンライト」というアプローチを採用しており、データを書き込む(保存する)際に厳格なスキーマに従ってデータを整理・加工します。これにより、データの品質と一貫性が担保され、分析クエリのパフォーマンスも高くなります。主な利用者は、ビジネスアナリストや意思決定者であり、定型的なレポート作成やKPI(重要業績評価指標)のモニタリング、OLAP(Online Analytical Processing)分析などに活用されます。
構造的な違たいkいについて
データレイクとデータウェアハウスの構造的な違いについて抑えておきましょう。
まず、それぞれは扱うデータの種類が異なります。データレイクは前述の通り、構造化、半構造化、非構造化といったあらゆる種類のデータをそのままの形式で受け入れます。一方、データウェアハウスは主に、分析に適した形に整理・変換された構造化データを扱います。
次に、データのスキーマ定義のタイミングです。データレイクは「スキーマオンリード」であり、データ利用時にスキーマを適用します。これにより、様々な形式のデータを柔軟に受け入れることができます。対してデータウェアハウスは「スキーマオンライト」であり、データ保存時にスキーマを定義・適用します。これにより、データの整合性や品質が保たれ、分析の効率性が向上します。
そして、データ処理の主な流れも異なります。データレイクでは、まず生データをロード(Load)し、その後必要に応じて変換(Transform)するELT(Extract, Load, Transform)プロセスが一般的です。データウェアハウスでは、データを抽出(Extract)し、変換(Transform)した後にロード(Load)するETL(Extract, Transform, Load)プロセスが主流です。この違いは、データ活用の柔軟性と速度に影響を与えます。
それぞれどのような目的に適しているのか?
データレイクとデータウェアハウスは、それぞれ異なる強みを持ち、適した利用目的があります。
データレイクが適しているのは、以下のような目的です。
- 高度なデータ分析・機械学習: 生データや多様な形式のデータを利用して、機械学習モデルのトレーニングや予測分析、パターン認識などを行いたい場合。
- 探索的データ分析: まだ具体的な活用方法が決まっていないデータや、新しいインサイトを発見したい場合。データサイエンティストが様々な角度からデータを探索するのに適しています。
- ビッグデータ処理: 大量のストリーミングデータやIoTデータなど、リアルタイム性の高いデータを処理・分析したい場合。
- データアーカイブ・バックアップ: 将来利用する可能性のあるデータを、低コストでとりあえず保存しておきたい場合。
一方、データウェアハウスが適しているのは、以下のような目的です。
- 定型レポーティング: 売上レポート、財務諸表、顧客動向レポートなど、定期的に作成されるビジネスレポートの基盤として。
- ビジネスインテリジェンス(BI): BIツールと連携し、ダッシュボードでのデータ可視化や、経営指標のモニタリング、業績分析を行いたい場合。
- 意思決定支援: 過去のデータに基づいた分析結果を元に、戦略的な意思決定を行いたい場合。
- データ品質と一貫性の担保: 複数のシステムから収集したデータを統合し、信頼性の高いデータに基づいて分析を行いたい場合。
データレイクとデータウェアハウスのメリット・デメリット
それぞれの技術のメリットとデメリットを理解することは、最適な選択をする上で非常に重要です。以下にテーブルで整理し、その内容を補足します。
ポイント解説:
データレイクは、あらゆる種類のデータをそのままの形で安価に保存できる柔軟性が最大のメリットですが、その反面、データが整理されていないため、活用するには専門的な知識やツールが必要となり、データ品質の管理も重要になります。「データスワンプ(データの沼)」化させない運用が求められます。
データウェアハウスは、データが整理・加工されているため、ビジネスユーザーでも比較的容易に高品質なデータを用いた分析が可能です。しかし、事前にデータ構造を定義する必要があるため、新しいデータソースへの対応や分析要件の変更に対する柔軟性はデータレイクに劣り、構築・維持コストも高くなる傾向があります。
どちらを選ぶべきか?その判断基準について
データレイクとデータウェアハウスのどちらを選ぶべきか、あるいはどのように使い分けるべきかは、企業のデータ戦略、利用目的、保有するデータの種類、そして利用者のスキルセットによって異なります。
以下の点を考慮して判断すると良いでしょう。
1.扱うデータの種類と量
- 非構造化データ(テキスト、画像、動画など)を大量に扱い、将来的に様々な分析に活用したい場合は、データレイクが適しています。
- 主に構造化された業務データを扱い、レポーティングや定型分析が中心であれば、データウェアハウスが適しています。
2.分析の目的とアプローチ
- 機械学習モデルの開発や、まだ明確でない課題に対する探索的な分析を行いたい場合は、データレイクが有効です。
- 特定のビジネス課題の解決や、経営指標の可視化、定型的なレポート作成が主な目的であれば、データウェアハウスが適しています。
3.利用者のスキルセット
- データサイエンティストやデータエンジニアが中心となって高度な分析を行う場合は、データレイクの柔軟性が活かせます。
- ビジネスアナリストや一般のビジネスユーザーがセルフサービスでデータを活用したい場合は、整理されたデータウェアハウスが使いやすいでしょう。
4.予算とリソース
- 初期コストを抑え、柔軟に拡張していきたい場合は、クラウドベースのデータレイクサービスが選択肢になります。
- データの品質と分析のパフォーマンスを重視し、専門的なリソースを投入できる場合は、データウェアハウスの構築を検討します。
5.アジリティと将来性
- 変化の速いビジネス環境に対応し、新しいデータソースや分析手法を迅速に取り入れたい場合は、データレイクが有利です。
- 確立された分析基盤で安定した運用を求める場合は、データウェアハウスが適しています。
データレイクハウスについて
近年では、データレイクの柔軟性とデータウェアハウスの分析性能を併せ持つ「データレイクハウス」というアーキテクチャも注目されています。これは、データレイク上にデータウェアハウスのような管理機能や高速なクエリエンジンを組み合わせることで、両者の利点を享受しようとするアプローチです。
企業のニーズによっては、このようなハイブリッドな選択も有効です。
理解を深めるために
データレイクとデータウェアハウスの理解をさらに深めるために、関連するいくつかのキーワードについても触れておきましょう。
データマートとの違いについて
データマートは、データウェアハウスの中から、特定の部門やユーザーグループ、あるいは特定の分析目的に合わせて必要なデータだけを抽出・集約した、より小規模なデータベースです。例えば、営業部門向けのデータマート、マーケティング部門向けのデータマートといった形で利用されます。
データウェアハウスが企業全体のデータを統合的に管理する「中央倉庫」だとすれば、データマートはそこから必要な品物だけを取り出して整理した「部門別の小さな店舗」のようなイメージです。データマートを利用することで、ユーザーは自分たちに関係の深いデータに迅速にアクセスし、効率的に分析を行うことができます。データレイクから直接データマートを構築するケースもあります。
Snowflakeについて
Snowflakeは、近年非常に注目を集めているクラウドベースのデータプラットフォームです。Snowflakeの大きな特徴は、データレイクとデータウェアハウスの機能を統合的に提供し、「データクラウド」というコンセプトを提唱している点です。
具体的には、ストレージとコンピュート(計算処理能力)を完全に分離したアーキテクチャを採用しており、データの量や処理の負荷に応じてそれぞれを独立してスケールアップ・ダウンさせることができます。これにより、コスト効率とパフォーマンスを両立できます。
また、構造化データだけでなく、半構造化データ(JSON、Avro、ORC、Parquet、XMLなど)もネイティブにサポートしており、データレイクとしてもデータウェアハウスとしても利用できる柔軟性を持っています。
さらに、異なるクラウドプロバイダー間でのデータ共有や、データマーケットプレイスを通じた外部データとの連携も容易に行える点が強みです。Snowflakeのようなプラットフォームの登場は、データレイクとデータウェアハウスの境界を曖昧にし、より統合的なデータ活用を促進しています。
総括
本記事では、「データレイクとデータウェアハウスの違い」をテーマに、それぞれの定義、構造、適した目的、メリット・デメリット、そして選択の判断基準について解説しました。
データレイクは多様なデータをそのまま蓄積し、将来の未知の分析にも対応できる柔軟性を持つ「データの湖」です。一方、データウェアハウスは分析目的に合わせて加工・整理されたデータを格納し、迅速な意思決定を支援する「データの倉庫」です。
どちらか一方だけが優れているというわけではなく、企業のデータ戦略や目的に応じて最適なものを選択、あるいは両者を組み合わせて活用することが重要です。データマートやSnowflakeのような関連技術・サービスも理解することで、より自社に適したデータ基盤の構築が可能になるでしょう。